「ねぇ、ナナ。あたし達の出会いを覚えてる?」
このモノローグを聞いただけで、胸の奥がキュッと締め付けられる人は多いのではないでしょうか。
2000年代、日本中の女性たちを熱狂させ、社会現象となった矢沢愛先生の傑作漫画『NANA -ナナ-』。
上京する新幹線の中で偶然隣り合わせた、同じ名前を持つ二人の少女。「大崎ナナ」と「小松奈々(ハチ)」。
夢を追う強さと、恋に溺れる弱さ。キラキラとした青春の中に潜む、ヒリヒリするような痛み。
連載休止から長い時が経ちました。しかし、大人になった今だからこそ、あの頃とは全く違う視点で「彼女たちの痛み」が理解できることに気づきます。
映画で観た人も、アニメで聴いた人も。今こそ原作漫画を開いて、707号室の扉をもう一度叩いてみませんか?
この記事では、少女漫画の金字塔『NANA』がなぜこれほどまでに私たちの心を掴んで離さないのか、その理由を徹底解説します。
正反対の「ふたりのNANA」が教えてくれること

物語の核となるのは、性格も育ちもファッションも正反対な二人の「ナナ」の奇妙な共同生活です。
強く孤独な「大崎ナナ」と、恋に生きる「小松奈々(ハチ)」
パンクバンド「BLACK STONES(ブラスト)」のボーカルとして、成功を夢見て孤独に戦うナナ。
一方で、恋愛体質で流されやすく、すぐに誰かに依存してしまうハチ。
一見すると水と油の二人ですが、お互いに「自分にないもの」を補い合うように惹かれ合います。ナナの強がりな背中をハチの笑顔が救い、ハチの危なっかしさをナナの強さが守る。友情を超えた、魂の結びつきのような関係性は、読む人の心に「理想の絆」として刻まれます。
当時はハチにイライラした?大人になると分かる彼女の「強さ」
連載当時、若かった読者の多くはハチに対して「男にだらしない」「イライラする」という感想を持ったかもしれません。
しかし、大人になって読み返すと、評価が一変します。
ハチは、自分の弱さを認め、どんなに傷ついても他人を愛することを諦めない、驚くほどタフな女性です。
現実と折り合いをつけ、母親として、女性として生きようとするハチの姿に、今の私たちなら共感し、その「強さ」に涙するはずです。
ルームシェアという「奇跡の空間(707号室)」への憧れ
二人が暮らす多摩川沿いのアンティークなマンション、707号室。
そこで繰り広げられる、お揃いのグラス、イチゴのケーキ、テーブルを囲む仲間たち。
それは、誰もが一度は憧れる「青春の聖域」です。物語が過酷になればなるほど、あの707号室での何気ない日常が、宝石のように輝いて見えてきます。
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議論再燃!?タクミかノブか、それとも…男たちの魅力

『NANA』を語る上で避けて通れないのが、「誰派?」という論争です。
特にハチを巡る男性キャラクターたちの描かれ方は、少女漫画の枠を超えたリアリティがあります。
夢を追う男と、現実を守る男。あなたなら今、誰を選ぶ?
心優しく、ハチと同じ目線で夢を語れるギタリスト・ノブ。
冷徹で支配的だが、圧倒的な経済力と決断力でハチを守ろうとするリーダー・タクミ。
「愛か、生活か」。
若い頃は「絶対にノブ!」と思っていた人が、社会の厳しさを知った今読み返すと、「タクミの選択も否定できない…むしろ頼もしい」と感じることがあります。読者の人生経験によって「正解」が変わる。これこそが本作の深さです。
レンという存在の儚さと、ナナとの切なすぎる絆
そして、ナナの恋人であり、人気バンド「TRAPNEST(トラネス)」のギタリスト・本城蓮(レン)。
彼とナナの関係は、憧れであり、鎖であり、互いを傷つけ合う刃でもあります。
「首輪をつけてでも飼いたい」というほどの激しい愛。その結末を知っているからこそ、二人が笑い合っているシーンを見るだけで、涙が止まらなくなります。
ヤスやシン、脇を固めるキャラクターたちの名言
スキンヘッドのドラマー・ヤス(高木泰士)の大人すぎる包容力や、美少年ベーシスト・シン(岡崎真一)が放つ核心を突いた言葉。
「人間は誰でも孤独なんだよ」
そんな彼らのセリフ一つ一つが、大人の心に刺さる名言集となっています。
実写・アニメファンも必読!「音」と「映像」が聴こえる漫画表現

『NANA』はメディアミックスが大成功した作品としても有名です。
映画やアニメから入った方も多いでしょう。しかし、原作漫画には「映像以上の情報量」が詰まっています。
中島美嘉と宮崎あおいが体現した「完璧なビジュアル」の衝撃
2005年の実写映画化は衝撃でした。中島美嘉さんが演じるナナの、まるで漫画から抜け出してきたかのような完成度。そして宮崎あおいさんの愛くるしいハチ。
映画ファンの方が原作を読むと、「あのシーンの裏側で、二人はこんなことを考えていたのか」という驚きがあるはずです。映画では尺の都合でカットされた繊細な心理描写(モノローグ)が、原作には溢れています。
土屋アンナ・OLIVIA…アニメ版が彩った「音楽」の世界
アニメ版の功績は、作中のバンド「ブラスト」と「トラネス」に実際の「音」を与えたことです。
土屋アンナさんのハスキーな歌声、OLIVIAさんの天使のような高音。
原作漫画を読んでいると、ライブシーンで自然と脳内に『GLAMOROUS SKY』や『a little pain』が再生されます。
「音の出ない漫画」なのに、ページから爆音が聴こえてくる。その感覚は『NANA』でしか味わえません。
ヴィヴィアンなど、色褪せないファッションの教本として
矢沢愛先生の前職が服飾学校に通っていたこともあり、作中のファッションは超一級品。
特にヴィヴィアン・ウエストウッドのアーマーリングやロッキンホース・バレリーナは、この作品を通じて伝説となりました。
今見ても全く古さを感じさせない、洗練されたスタイリング。ファッション誌を眺めるような楽しさも、本作の魅力の一つです。
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なぜ「休載中」の今、読むべきなのか

ご存知の通り、『NANA』は2009年から作者急病のため長期休載中です。
「完結していないなら、読むのが怖い」と思う方もいるかもしれません。それでも、私は今読むことを強くおすすめします。
物語はクライマックス直前!「あの場所」で止まった時間
物語は、それぞれの運命が大きく動き出し、未来(現代)のシーンと交錯する重要な局面で止まっています。
未完であることは確かに切ないですが、それゆえにキャラクターたちは、私たちの心の中で「永遠にあの頃のまま」生き続けています。
作者の回復を待ちながら作品を愛し続けること
近年、矢沢愛先生は展覧会などでイラストを発表されており、創作への意欲は失われていません。
ファンにできることは、作品を忘れず、愛し続けること。
「いつか続きが読めたら奇跡。でも、ここまでの物語だけでも十分に人生の宝物」。そう割り切って楽しむ大人のファンが増えています。
電子書籍なら全21巻をスマホに入れて、いつでも707号室に行ける
全21巻というボリュームは、電子書籍で持ち歩くのに最適です。
通勤電車の中で、夜寝る前のベッドの中で。
ふとした瞬間に707号室を訪れ、ナナたちの言葉に触れる。それは、忙しい日常を送る私たちにとって、極上の逃げ場所(シェルター)となるはずです。
まとめ

『NANA -ナナ-』は、単なる恋愛漫画ではありません。
痛み、孤独、友情、夢、そして現実。人生のすべてが詰まった教科書のような作品です。
昔読んでいた人: 大人になった今の感性で、もう一度ハチの気持ちに寄り添ってください。
映画・アニメファンの人: 原作でしか描かれない深い心理描写と、その後の展開を目撃してください。
まだ読んでいない人:これからこの衝撃に出会えるあなたが羨ましいです。
物語はまだ途中です。けれど、そこにある感動は本物です。
ねぇ、ナナ。あたし達は今でも、あなたの物語を待ち続けているよ。
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